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民法 債権  (H17-27)


債権者代位権に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らして妥当でないものの組合せはどれか。


ア 著名な陶芸家の真作とされた陶器がA→B→Cと順次売却されたが、後にこれが贋作と判明した場合において、無資力であるBがその意思表示に要素の錯誤があることを認めているときは、Bみずから当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、Cは、Bに対する売買代金返還請求権を保全するために、Bの意思表示の錯誤による無効を主張して、BのAに対する売買代金返還請求権を代位行使することができる。

イ 債権者Aは、Bに対する金銭債権を保全するためにBのCに対する動産の引渡請求権を代位行使するにあたり、Cに対して、その動産をBに引渡すことを請求することはできるが、直接自己に引渡すことを請求することはできない。

ウ 不動産がA→B→Cと順次売却された場合において、それらの所有権移転登記が未了の間に、Dが原因証書等を偽造して、同一不動産につきA→Dの所有権移転登記を経由してしまったときは、Cは、Bの債権者として、BがAに代位してDに行使することができる所有権移転登記の抹消請求権を代位行使することができる。

エ AはBから同人の所有する建物を賃借する契約を締結したが、その建物の引渡しが行われていない状態のもとでそれをCが権原なく占有してしまった場合において、Aが、自己の賃借権を保全するためにBに代位して、Cに対して建物の明渡しを請求するときは、Aは、建物を直接自己へ引き渡すことを請求することができる。

オ 自動車事故の被害者Aは、加害者Bに対する損害賠償債権を保全するために、Bの資力がその債務を弁済するに十分であるか否かにかかわらず、Bが保険会社との間で締結していた自動車対人賠償責任保険契約に基づく保険金請求権を代位行使することができる。


1 ア・ウ

2 ア・エ

3 イ・エ

4 イ・オ

5 ウ・オ



解答 4


オとアは、要件についての問題であり、イは、行使方法の問題、ウとエは転用事例の関する問題です。

問題文をこのようにわけて解くと頭を切り替えながら解けるので効果的です。この順序で解説しておきます。


(要件)


オ 誤

 要件にあてはめながら解いてみましょう。


(被保全債権に関する要件)

・被保全債権が金銭債権であること(423条1項本文)

→これは、AのBに対する損害賠償債権が被保全債権ですから、金銭債権ですよね。

・被保全債権の履行期が到来していること(423条2項)

→特に問題文では明示されていませんが、被保全債権の履行期が到来していることが前提となっているのでしょう。

(債務者に関する要件)

・債務者が無資力であること(423条1項本文)

→Bの弁済の資力が十分であれば、無資力要件を欠いています。

・債務者が権利を行使していないこと

→特に問題文では明示されていませんが、債務者が権利を行使していないことが前提となっているのでしょう。

(行使される権利に関する要件)

・一身専属的な権利でないこと(423条1項但書)

→保険金請求権も金銭債権ですから、Bでなければ行使できない一身専属的な権利ではないですね。

そうすると、債務者が無資力であることの要件を欠いていますから、Aは債権者代位権を行使することはできませんね。

よって、オは誤りとなります。

なお、要件が特に明示されていない場合は、問題作成上当然の前提となっている場合がありますから、要件が明示されていないからといって直ちに誤りとはならないので注意してください。

このあたりも他の肢との比較において正誤を判断することになります。


ア 正

これも要件にあてはめてみましょう。

少し簡潔に書きますと、Cの被保全債権は売買代金返還請求権ですから、金銭債権であり、Bは無資力ですね。

これも履行期の到来と権利行使していないという要件は明示されていませんから、当然の前提となっているのでしょう。

さて、BのAに対する売買代金返還請求権自体は一身専属的な権利ではありませんね。

しかし、この売買代金返還請求権が発生するためには、Bが錯誤無効を主張する必要があるのですが、Cが代わって錯誤無効の主張することはできるのでしょうか。

本来、錯誤無効は当事者本人の意思を尊重して、本人しか主張できないものなのです。

これを、例えば公序良俗に反している場合のように誰でも無効と主張できる絶対的無効と対比して相対的無効といいます。

この錯誤無効の主張が本人しかできないとすると、本問のような債権者は債権の回収ができなくなりますね。

そこでこの場合は、本問のように、債務者本人が要素の錯誤を認めていることを条件として、債権者が債務者本人に代わって錯誤無効の主張をして、BのAに対する売買代金返還請求権を代位行使できるとされているのです。

これも民法の公平バランスを保つために、債務を弁済しない債務者よりも債権者を保護しようとする政策的な判断なのです。

ですから、この場合、Cは代位行使できるのです。

よって、アは正しいのです。


(行使方法)

イ 誤

オとアは、要件についての問題ですが、イは、行使方法の問題です。

BのCに対する債権が、動産の引渡請求権の場合、Bの受け取り拒否が考えられますから、このままでは、Aは債権の回収ができず、債権者代位権の意味がなくなります。

ですから、Aは動産をCから直接引き渡してもらうことができるのです。

よって、イは誤りです。


(転用事例)

エ 正

AB間では、Bの建物を賃借する契約を締結しているので、本来BはAに対して賃貸借契約に基づきその建物を引き渡さなければなりません。

しかし、まだその建物の引渡しが行われていない状態のもとで、Cが権原なく建物を占有してしまっています。

この場合、建物の所有者たるBはCに対して、建物の返還請求ができますが、それをせずに放置していれば、Aは建物を使用することができず賃貸借契約の目的を達成することができません。

そこで、AはBに対して有する賃借権を保全するために、債権者代位権を転用するのです。

Aの被保全債権たる賃借権は、金銭債権ではありませんが、自己の賃借権を保全する必要性があります。

また、賃借権は、特定の建物を利用する権利ですから、Bに他の金銭的な財産があったとしても、Aにとっては何も意味がないですから、Bの無資力は問題になりません。

それゆえ、債権者代位権を転用して、Aは賃借権の保全のために、Bに代位してCに対する建物の返還請求権を行使することができるのです。

なお、その他の要件については問題文に明示されていませんが、当然の前提としてあるものと考えてください。

そして、建物をBのもとに返還しようとしても、Bが拒否すれば結局Aは建物を使用できませんから、Aは建物を直接自己に引渡しをすることができるのです。

よって、エは正しいのです。


ウ 正

不動産がA→B→Cと順次売却された場合、CはBに対して、所有権移転登記請求権を有し、同様にBはAに対して、所有権移転登記請求権を有しています。

この状況下で、Dが原因証書等を偽造して、同一不動産につきA→Dの所有権移転登記を経由してしまったときは、登記を元の状態に戻すべくAはDに対して所有権移転登記の抹消請求をすることができます。

しかし、Aがその抹消請求を放置していれば、BもCも所有権移転登記をすることができません。

そこで、Aの直接の債権者BがAのDに対する所有権移転登記の抹消請求権を代位行使することが考えられます。

もっとも、すでに不動産をCに売ってしまったBにしてみれば、自己に所有権移転登記しようがしまいがあまり関係なく関心を持てないかもしれません。

そのため、Bは積極的に自己に所有権移転登記しようと、AのDに対する所有権移転登記の抹消請求権を代位行使しない場合もありえます。

そこで、不動産の現所有者で最も利害関係のあるCの所有権移転登記請求権を保護する必要性が高いのです。

そうすると、Cは、自己の所有権移転登記請求権を保全するために、本来BがやるべきAのDに対する所有権移転登記の抹消請求権の代位をさらに代位行使して、まず登記をいったんAに戻します。

その後、Cは、同様に自己の所有権移転登記請求権を保全するために、BのAに対する所有権移転登記請求権を代位行使して、Bに登記を移転させて、最後に自己に登記を移転させるという方法をとる必要があるのです。

このように債権者の債権回収の目的を達成するため、公平の観点から、債権者代位権をさらに代位するということも認められるのです。

よって、ウは正しいのです。

以上より、イとオが妥当でなく、正解は4です。




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