WEB練習問題(リニューアル中) > 民法過去問(改正未対応 > 民法 債権 > 民法 債権 (H27-35)

民法 債権 (H27-35)


婚約、婚姻および離婚に関する以下の相談に対する回答のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。


ア <相談> 私はAとの婚約にあたりAに対して結納金100万円を贈与したのですが、結局は婚姻に至りませんでした。私はAに対して結納金100万円の返還を請求できるでしょうか。

ア <回答> 結納は婚姻の成立を確証し、併せて当事者間の情宜を厚くする目的で授受される一種の贈与とされています。婚姻が解消された場合には原則として返還すべきものですので、あなたには結納金の返還を請求できる権利があります。

イ <相談> 私は事実婚状態にあったBと合意のうえ入籍することにして婚姻届を作成しましたが、提出前にBは交通事故に遭い、現在昏睡状態にあります。こうした状態でも先に作成した婚姻届を提出すれば、私はBと正式に婚姻できるのでしょうか。

イ <回答> 判例によれば、婚姻が有効に成立するためには、届出時点における当事者の婚姻意思が必要です。婚姻届作成後に翻意したというような特段の事情がないとしても、現在Bは意思能力を欠いた状態ですので、婚姻届を提出したとしても婚姻の効力は生じません。

ウ <相談> 私は配偶者Cとの間に子がいますが、Cは5年前に家を出て他で生活しており、子の養育費はすべて私か負担しています。Cに対して離婚訴訟を提起するにあたり、併せてこの間の養育費の支払いを求めることができるでしょうか。

ウ <回答> 子の監護に要する費用は、婚姻から生じる費用です。婚姻費用の請求は婚姻の継続を前提とする請求であるのに対して、離婚訴訟は婚姻の解消を目指す訴訟ですから、このように性質が異なる訴訟を一緒に行うことはできません。離婚を申し立てる前に、監護費用の支払いを求める訴えを別途提起する必要があります。

エ <相談> 私と配偶者であるDとの婚姻関係は既に破綻しており、離婚にむけて協議を進めています。D名義のマンションを私に贈与することをDと私とは書面により合意したのですが、離婚届を提出する前日になって、Dは、この贈与契約を取り消すと言ってきました。Dの取り消しは認められるのでしょうか。

エ <回答> 民法の規定によれば夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消すことができますが、その趣旨は、夫婦間の約束事に法は介入すべきではなく、当事者の道義に委ねるべきだというものです。婚姻が実質的に破綻しているような場合にはこの趣旨は妥当しませんので、Dはマンションの贈与契約を取り消すことができません。


1 ア・イ

2 ア・エ

3 イ・ウ

4 イ・エ

5 ウ・エ




解答 2


婚約、婚姻および離婚に関する基本的な問題ですので是非とも正解したいところです。


テキストP744~


肢ア  正

回答の通り、結納は婚姻の成立を確証し、併せて当事者間の情宜を厚くする目的で授受される一種の贈与とされています。婚姻が解消された場合には、この贈与も撤回されると解するのが通常ですから、法律上原因のないものとして、不当利得として返還すべきものなのです(703条)。

ですから、結納金の返還を請求できる権利があるのです。

肢イ  誤

婚姻が有効に成立するためには、婚姻の意思という実質的要件と婚姻の届出という形式的要件が満たされている必要があります。この婚姻の意思と届出がない場合は、婚姻は無効となります。

婚姻の届出という要件があるのは、婚姻は単に当事者だけの問題ではなく、夫婦という一つの家族が社会にでき、社会性をもつことから必要とされているのです。

そのため、婚姻意思があり、その意思に基づいて届書を作成したならば、この時点で後は届出をするだけで上記の婚姻成立要件を満たしますね。

ですから、もし、その後に事故等で意識を失っていても、その受理前に翻意したなど特段の事情のない限り、婚姻意思がある状態が維持されていると推認できるので、届書の受理により婚姻は有効に成立するのです。

したがって、本肢についても特段の事情がない限り、事故前のBの婚姻意思がある状態は維持されており、婚姻届を提出すれば婚姻は有効に成立するのです。

肢ウ  誤

最高裁平成19年3月30日

「離婚の訴えにおいて、別居後単独で子の監護に当たっている当事者から他方の当事者に対し、別居後離婚までの期間における子の監護費用の支払を求める旨の申立てがあった場合には、民法771条・766条1項が類推適用されるものと解するのが相当であり、当該申立ては、人事訴訟法32条1項所定の子の監護に関する処分を求める申立てとして適法なものであるということができるから、裁判所は、離婚請求を認容する際には、当該申立ての当否について審理判断しなければならない。」

第771条

 第766条から第769条までの規定は、裁判上の離婚について準用する。

第766条

1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。

この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

人事訴訟法第32条(附帯処分についての裁判等)

 裁判所は、申立てにより、夫婦の一方が他の一方に対して提起した婚姻の取消し又は離婚の訴えに係る請求を認容する判決において、子の監護者の指定その他子の監護に関する処分、財産の分与に関する処分又は標準報酬等の按分割合に関する処分についての裁判をしなければならない。

761条1項からわかるとおり、協議離婚の場合は、子の監護費用を定め、これが裁判上の離婚にも準用されています(771条)。

監護費用とはいわゆる養育費(子どもを育てていくための養育に要する費用)です。

 したがって、Cに対して離婚訴訟を提起するにあたり、併せてこの間の養育費の支払いを求めることができるのです。

肢エ  正

夫婦は互いに尊重し愛情を持って接するのが前提とされているので、夫婦間の約束に法的拘束力をもたせるのは、互いにギクシャクした関係をもたらすことになります。そのため、夫婦間の約束には法的拘束力をもたせず、婚姻中いつでも取消すことができるのです(754条)。もっとも、判例 では、婚姻中にあっても実質上破綻しているような場合は、離婚しているのと変わらないので、夫婦間の契約も取り消すことができないとされています。

したがって、本肢のように、婚姻が実質的に破綻しているような場合、Dはマンションの贈与契約を取り消すことができないのです。







前の問題 : 民法 債権 (H27-34)
次の問題

問題一覧 : 民法 債権

WEB練習問題(リニューアル中) > 民法過去問(改正未対応 > 民法 債権 > 民法 債権 (H27-35)