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行政法 国家賠償法 (H27-20)


A県に居住するXは、折からの豪雨により増水した河川Bの水流が堤防を越えて自宅敷地内に流れ込み、自宅家屋が床上浸水の被害を受けたことから、国家賠償法に基づく損害賠償を請求することとした。なお、この水害は、河川Bの堤防の高さが十分でなかったことと、河川Bの上流に位置する多目的ダムCにおいて、A県職員のDが誤った放流操作(ダムに溜まっている水を河川に流すこと)を行ったことの二つが合わさって起きたものである。また、河川BとダムCはA県が河川管理者として管理しているが、その費用の2分の1は国が負担している。この事例に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。


ア 本件では、公の営造物たる河川の設置管理の瑕疵が問題となっており、Xが国家賠償法2条に基づく損害賠償を請求することができる以上、Dの放流操作に違法・過失があるとして国家賠償法1条に基づき損害賠償を請求することはできない。

イ 本件では、公の営造物たる河川の設置管理の瑕疵とDの違法な放流操作が問題となっていることから、Xは国家賠償法2条に基づく損害賠償を請求することもできるし、国家賠償法1条に基づき損害賠償を請求することもできる。

ウ 本件では、河川Bの管理費用を国も負担しているが、管理権者はA県であることから、Xが国家賠償法2条に基づき損害賠償を請求する際には、A県を被告としなければならず、国を被告とすることはできない。

エ 本件では、河川Bの管理費用を国も負担していることから、管理権者がA県であるとしても、Xが国家賠償法2条に基づき損害賠償を請求する際には、A県を被告とすることも国を被告とすることもできる。

オ 本件で、原告の請求が認容され、A県が国家賠償法2条に基づき賠償金の全額を支払った場合には、他にその損害を賠償する責任を有する者がいれば、その者に対して求償することができる。

カ 本件で、原告の請求が認容され、A県が国家賠償法2条に基づき賠償金の全額を支払った場合には、河川管理者がA県である以上、他にその損害を賠償する責任を有する者がいるとしても、その者に対して求償することはできない。


1 ア・ウ・オ

2 ア・ウ・カ

3 ア・エ・カ

4 イ・エ・オ

5 イ・エ・カ



解答 4 


国家賠償法2条、3条からの出題です。組合せ問題であり、アイ、ウエ、オカがちょうど対になって結論が異なるので容易に正解できるでしょう。


テキストP359~370


肢ア・イ

国家賠償法1条と2条の責任は、択一的なものではなく併存できるものです。

そのため、肢イのように、公の営造物たる河川の設置管理の瑕疵とDの違法な放流操作が問題となっている場合、Xは国家賠償法2条に基づく損害賠償を請求することもできるし、国家賠償法1条に基づき損害賠償を請求することもできるのです。

肢ウ・エ

第3条1項

 前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。

条文からわかる通り、営造物の設置・管理する者と営造物の設置・管理の費用を負担する者とが異なる場合に、どちらか一方にしか損害賠償請求できないとすると、原告が被告を誤ってしまった場合、救済の機会を失う恐れがあります。

 そのため、営造物の設置・管理する者と営造物の設置・管理の費用を負担する者の両方に損害賠償請求できるようにしてあるのです。これも被害者の保護を厚くしようという趣旨です。

よって、肢エの通り、河川Bの管理費用を国も負担していることから、管理権者がA県であるとしても、Xが国家賠償法2条に基づき損害賠償を請求する際には、A県を被告とすることも国を被告とすることもできるのです。

肢オ・カ

 国家賠償法2条2項

「前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。」

公の営造物の設置又は管理の瑕疵による賠償責任がある場合に、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有します。

いわば民法における不真正連帯債務のようなものですので、損害の公平な分担から、他に責任がある者がいれば、求償できるのは当然です。

よって、肢オのとおり、原告の請求が認容され、A県が国家賠償法2条に基づき賠償金の全額を支払った場合には、他にその損害を賠償する責任を有する者がいれば、その者に対して求償することができるのです。












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