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民法 債権 (H26-31)


AがBから金1000万円を借り受けるにあたって、CおよびDがそれぞれAから委託を受けて保証人(連帯保証人ではない通常の保証人で、かつお互いに連帯しない保証人)となり、その後CがBに対して、主たる債務1000万円の全額を、同債務の弁済期日に弁済した。この場合に関する以下の記述のうち、民法の規定に照らし、正しいものはどれか。なお、CD間には負担部分に関する特段の合意がないものとする。

1 CはAおよびDに対して求償することができ、求償権の範囲は、Aに対しては、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及び、Dに対しては、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及ぶ。

2 CはAおよびDに対して求償することができ、求償権の範囲は、Aに対しては、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及び、Dに対しては、500万円である。

3 CはAに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及ぶ。

4 CはAに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金等に及ぶ。

5 CはDに対してのみ求償することができ、求償権の範囲は、500万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金に及ぶ。



解答 2


本問は委託を受けた単純保証人についての基本的な条文知識問題ですので是非とも正解したいところです。


テキストP508~521


本問のポイントは、委託を受けた単純保証人の一人が、保証債務を全額弁済した場合に、「①誰に求償できるのか、②求償できるとして、求償の範囲はどこまでか」という2点です。

まず、「①誰に求償できるのか」という点からみていきます。

委託を受けた単純保証人の一人が、保証債務を全額弁済した場合、本来の支払い義務者である主債務者に求償できるのは当然です。

保証人はあくまでも主債務者が履行不能のときに弁済するという二次的な債務を負う者であり、保証人が弁済すれば、主債務者に求償できるわけです。

第459条1項

 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する。

したがって、本問では、委託を受けた単純保証人の一人Cが主債務者Aに求償できます。

また、本問の共同保証は、問題文から連帯保証でもなく、保証連帯でもありません。

この共同保証の場合、複数人が、単純保証をした場合、分割債務のように債務額は保証人の数に応じて分割され、これを分別の利益といいます。

分別の利益のある共同保証人間では、そもそも、合意などで分割した債務しか弁済義務がないため、負担部分がありません。

ですから、分別の利益のある共同保証人間での求償はないのが原則です。

もっとも、保証人のうちの一人が全額弁済した場合は、分割債務額を超えた部分について、他の共同保証人に請求できます。

本問では、Cが全額弁済していますので、500万円についてDに求償できます。

よって、Cは、AとDに求償できます。

この時点で、肢3~5は全て誤りとなり、肢1と2で正誤を判断することになります。

次に「②求償できるとして、求償の範囲はどこまでか。」についてみていきます。

委託を受けた保証人は、主債務者に対してかかった費用など全額について求償することができます。

これは委任でいうところの受任者の費用償還請求権と同じ趣旨(650条1項、3項)です。

第650条  

1 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる。

3 受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。

したがって、CはAに対して、1000万円および求償権行使までに生じた利息、遅延損害金を請求できます。

また、上記の通り、保証人のうちの一人が全額弁済した場合は、分割債務額を超えた部分について、他の共同保証人に請求できます。

分割債務額を超えた部分については、委託を受けない保証人と同様なので、本人の意思に反しない事務管理者の費用償還請求権と同じ趣旨なのです(702条1項)。

委託を受けていない主債務者の意思に反しない保証人は、自ら進んで保証人になったわけですから、弁済した当時、主債務者が利益を受けた限度(利息、費用等は含まれない)で求償できるのです(462条1項)。

委託を受けていないとはいえ、主債務者のために費用を負担するのですから、「義務なく他人のために事務の管理を始めた」事務管理と同様に考えることができ(697条)、本人の意思に反しない事務管理者の費用償還請求権と同じ趣旨なのです(702条1項)。

Cは、500万円までは、委託を受けた保証債務を負っていますが、500万円を超えた部分については、委託を受けていないにもかかわらず全額弁済したということになります。

したがって、CはDに500万円(利息、費用等は含まれない)を求償できることになります。

 以上より、正解は肢2となります。




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