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行政法 行政手続法 (H26-11)


不利益処分に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。


1 行政手続法は、不利益処分について、処分庁が処分をするかどうかを判断するために必要な処分基準を定めたときは、これを相手方の求めにより開示しなければならない旨を規定している。

2 行政手続法は、不利益処分について、処分と同時に理由を提示すべきこととしているが、不服申立ての審理の時点で処分庁が当該処分の理由を変更できる旨を規定している。

3 行政手続法は、処分庁が金銭の納付を命じ、または金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするときは、聴聞の手続も弁明の機会の付与の手続もとる必要がない旨を規定している。

4 行政手続法は、処分庁が意見陳述のための手続をとることなく不利益処分をした場合、処分の名あて人は処分後に当該手続をとることを求めることができる旨を規定している。

5 行政手続法は、原則として聴聞の主宰者は処分庁の上級行政庁が指名する処分庁以外の職員に担当させるものとし、処分庁の職員が主宰者となること、および処分庁自身が主宰者を指名することはできない旨を規定している。



解答 3  


不利益処分に関する基本的な問題ですので是非とも正解したいところです。肢3は少し細かい問題ですので、消去法で正解にたどり着いて欲しいです。


テキストP104~111、P115~116


肢1 誤

本問のように処分基準が法的義務のような規定は存在しません。

不利益処分についての処分基準の設定および公表に関しては、努力義務とされています。

不利益処分にあたるかどうかは個々の事案に応じて判断しなければならないので、一般的な基準で一律に判断することが難しいからです。

第12条  

1 行政庁は、処分基準を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない。

肢2 誤

本問のように「不服申立ての審理の時点で処分庁が当該処分の理由を変更できる旨」の規定は存在しません。

 処分の理由を変更できるとすると、不服申立人にとって不意打ちとなり、不服申立を認める趣旨を没却することになります。 不利益処分の理由の提示について以下の14条1項を押えておきましょう。

第14条  

1 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。

不利益処分をする場合は、原則として同時に理由を示す必要があります。

理由の提示義務があることで恣意的な不利益処分を防止して手続の公正かつ透明性を確保するためです。

申請に対する拒否処分の場合も、同時に、当該処分の理由を示さなければならない点は、不利益処分と同様です。

ただし、処分をすべき差し迫った必要がある場合は、例外的に同時に理由を示さなくてもよいのです。

緊急性が高いため同時理由を示すことができない場合でも、できるだけ理由を提示して恣意的な不利益処分を防止すべきなのです。

肢3 正

不利益処分がなされる場合、原則として聴聞や弁明手続(行手法13条)がなされます。不利益処分をする前に被処分者の意見を十分に聞いて、不当に不利益とならないように個人の権利・自由を保障するためです。

もっとも、常に聴聞や弁明手続がなされるわけではありません。

聴聞や弁明手続をする余裕がない程の公益上、緊急に不利益処分をする必要性の高い場合(2項1号)や信頼できる証拠等に基づいて不利益処分をするため聴聞や弁明手続をして主張・立証による反論する機会を与える必要がない場合(2項2号)、本問のように『納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、又は金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき。』は、例外的に聴聞や弁明手続がなされない場合もあるのです。

肢4 誤

 肢3の通り、不利益処分がなされる場合、原則として聴聞や弁明手続(行手法13条)がなされます。意見陳述手続(聴聞や弁明手続)が必要であるにも関わらず、なされないまま不利益処分がなされた場合、違法となります。この場合、処分取消訴訟で争われることになります。

 よって、本問のような規定は存在しません。

肢5 誤

第19条  

1 聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する。

聴聞手続きの趣旨が全うされるように、当事者および当事者の関係者以外の主宰者に聴聞手続きを主宰させることにしたのです(19条1項2項)。

この主宰者は行政庁が指名する職員その他政令で定める者に限られています。被処分者のために円滑・迅速に聴聞手続きができるようにしたためでしょう。

しかし、主宰者は、当事者および当事者の関係者以外は明文上で制限されていません。

ですから、当該不利益処分に関与した担当者を主宰者として指名することや本問のように処分庁の職員が主宰者となること、および処分庁自身が主宰者を指名することも不可能ではないのです。




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