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民法 債権 (H25-32)


Aは、B所有の甲土地上に乙建物を建てて保存登記をし、乙建物をCが使用している。この場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、誤っているものはいくつあるか。


ア Aが、甲土地についての正当な権原に基づかないで乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいて乙建物をCに使用させている場合に、乙建物建築後20年が経過したときには、Cは、Bに対して甲土地にかかるAの取得時効を援用することができる。

イ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、乙建物の所有権をAから譲り受けたBは、乙建物についての移転登記をしないときは、Cに対して乙建物の賃料を請求することはできない。

ウ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、Cは、Aに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことはできない。

エ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建てている場合、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要がある。

オ Aが、Bとの間の土地賃貸借契約に基づいて乙建物を建て、Cとの間の建物賃貸借契約に基づいてCに乙建物を使用させている場合、A・B間で当該土地賃貸借契約を合意解除したとしても、特段の事情のない限り、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることはできない。


1 一つ 

2 二つ 

3 三つ 

4 四つ

5 五つ



解答 2



過去問からの出題が多いので、是非とも正解したい問題です。


ア 誤  参考過去問(H21-28-B)

 時効の援用権者の範囲についての問題(145条)です。

 時効を援用することができるのは、条文上「当事者」とだけ規定されています(145条)。

 時効を援用するかどうかは当事者の判断に委ねられるからです。

 このように、時効の援用の趣旨は、当事者の意思の尊重でしたね。

 そのため、判例では、「当事者」とは、時効によって直接利益を受ける者、すなわち取得時効によって権利を取得し、消滅時効によって権利の制限または義務を免れる者をいい、間接に利益を受ける者は含まれないとされています。この判例の基準では、何が直接的で間接的なものかは明確ではないので客観的に判断できないところがあります。

 裁判官が直接的だと判断すれば直接的であり、間接的であると判断すれば間接的であるというような曖昧な基準です。

 そのため、ある程度覚えなければならないところです。


<援用権者として否定された者>

家屋賃借人

 土地所有権の取得時効について、家屋賃借人は直接利益を受ける者ではないので援用権者にはなれないのです(最判昭和44年7月15日)。

 建物の賃借人に過ぎないので、土地についての時効の利益については何も言えないということなのでしょう。本問のCがこれにあたります。

 なお、時効の援用権者の範囲については、民法第24回で詳細に解説してありますので、そちらでまた勉強しましょう。


イ 正  参考過去問(H10-30-2)

 賃貸人の地位についての問題ですね。新所有者が賃貸人たる地位を賃借人に対抗するためには所有権移転の登記が必要です。

 登記がなければ、賃借人が二重払いする危険があるからです。

 本問において、建物の賃貸人であるAが賃借物である乙建物の所有権を第三者Bに移転しています。

 新所有者Bが賃貸人たる地位を建物賃借人Cに対抗するためには乙建物の所有権移転の登記が必要なのです。


ウ 誤  参考過去問(H4-30-1) 民法第14回演習問題6肢2

 第三者の弁済(474条)の問題ですね。

 まず、土地賃貸借契約は、AとBとの間の契約ですから、Cには土地についての賃料支払い債務(義務)はありません。それにもかかわらずCがAのBに対する賃料債務を支払うということは、第三者弁済をするということです。第三者の弁済とは、第三者が自己の名において他人の債務を弁済することをいいます。

 もっとも、債務者の意思に反して利害関係のない第三者が弁済するとき(474条2項)は、第三者弁済は許されません。

 逆に、利害関係があれば、債務者の意思に反して弁済できることになります。

 利害関係とは、債務の弁済について法律上の利害関係がある場合をいいます。では、本問において、CがAの債務の弁済について法律上の利害関係があるでしょうか。

 もし、AがBに対して土地についての賃料支払い債務(義務)を履行せずに放置していたらどうなるでしょうか。債務不履行となりますから、Bに解除されてしまいます。

 Bに土地賃貸借契約を解除されてしまえば、Cは土地の賃借権限を失います。

 つまり、土地の所有者であるBがCに土地からでていけと土地明渡請求をされれば、Cは出て行かざるをいません。そのため、CはAの債務の弁済について法律上の利害関係があるのです。ですから、CはAに無断で甲土地の賃料をBに対して支払うことができるのです。


エ 正  参考過去問(H10-30-1)

 賃借権の譲渡(612条)についての問題ですね。


第612条1項

 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。


 賃貸借契約は、売買契約と異なり継続的な取引です。

 人同士の関係からいうと、売買契約は、購入と支払という1回だけの関係ですが、賃貸借契約は、毎月の支払と賃貸物の利用に加え、賃貸人に修繕してもらったりなど契約が継続する限り、ずっとお付き合いする関係にあります。

 ですから、契約の根底には、賃貸人と賃借人との信頼関係があります。

 この信頼関係というのは精神的なものというよりも、毎月きちんと賃料を支払えるのかという経済的な面や賃貸物を契約に従って適切に使用するという社会的な面における関係です。そのため、賃借権の譲渡も転貸も賃借人の勝手にすることはできず、賃貸人の承諾が必要なのです(1項)。

 したがって、本問について、Aが、Cに対して乙建物を売却するためには、特段の事情のない限り、甲土地にかかる賃借権を譲渡することについてBの承諾を得る必要があるのです。

 なお、ここで言う「特段の事情」とはどういう事情でしょうか。

 賃借権の譲渡についての賃貸人による承諾が得られていない場合であっても、賃貸人と賃借人との信頼関係が破壊されていないような事情がある場合には、解除を認める必要はないですね。

 例えば、無断転貸した場合、同居の親族等に少しの間だけ貸しておいたような場合も実質的には利用の主体に変更がないので信頼関係が破壊されているとはいえない事情もあるのです。これを信頼関係破壊の理論ともいいます。

 判例では、「背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある場合には、解除権は発生しない」とも言われています。

 この場合は、例外的に特段の事情があるので、賃貸人の同意がなくても賃借権の譲渡ができるのです。このような特段の事情という例外もよく問われるところですので合わせて押えておきましょう。


オ 正  参考過去問(H18-33-1)

 肢ウで解説したとおり、A・B間の土地賃貸借契約についてAの債務不履行によりBが解除した場合、Bは、Cに対して建物の明渡しを求めることができます。

 もっとも、土地の賃貸人Bと賃借人Aの賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情のない限り、信義則上建物の賃借人Cには対抗できないと解されています。

 合意解除というのは、AB間の解除契約ですが、AB間の土地賃貸借契約を解除すれば、Cは、もはやその土地からでていかざるをえず、建物を利用することができなくなるのでCの利益を不当に害するからです。

 Cに建物を貸しておいて、Cの知らないところでやっぱり出て行けという状況を契約で作出するというのは信義則に反するということです。

 この点が、Aに賃料不払いという債務不履行による解除との違いですので、合わせて押えておいてください。

 なお、転貸借契約の場合も同様です。転貸借契約が有効に成立した場合に、賃貸人と賃借人の賃貸借契約を合意解除しても、転借人には対抗できないと解されています。転借人の利益を不当に害するからです。




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