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行政法 行政手続法 (H24-13)


行政手続に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。


1 行政手続は刑事手続とその性質においておのずから差異があることから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではない。

2 公害健康被害補償法(公害健康被害の補償に関する法律)に基づく水俣病患者認定申請を受けた処分庁は、早期の処分を期待していた申請者が手続の遅延による不安感や焦燥感によって内心の静穏な感情を害されるとしても、このような結果を回避すべき条理上の作為義務を負うものではない。

3 一般旅客自動車運送事業の免許拒否処分につき、公聴会審理において申請者に主張立証の機会が十分に与えられなかったとしても、運輸審議会(当時)の認定判断を左右するに足る資料等が追加提出される可能性がなかった場合には、当該拒否処分の取消事由とはならない。

4 国税犯則取締法上、収税官吏が犯則嫌疑者に対し質問する際に拒否権の告知は義務付けられていないが、供述拒否権を保障する憲法の規定はその告知を義務付けるものではないから、国税犯則取締法上の質問手続は憲法に違反しない。

5 教育委員会の秘密会で為された免職処分議決について、免職処分の審議を秘密会で行う旨の議決に公開原則違反の瑕疵があるとしても、当該瑕疵は実質的に軽微なものであるから、免職処分の議決を取り消すべき事由には当たらない。



解答 2  


肢1 正

いわゆる成田新法事件において、憲法31条の定める法定手続の保障は、行政手続についても及ぶとしつつ、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を必ず与えることを必要とするものではないと解されるとしました。

したがって、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではないので正しいです。


肢2 誤

(最判平成3年4月26日)

「一般に、処分庁が認定申請を相当期間内に処分すべきは当然であり、これにつき不当に長期間にわたって処分がされない場合には、早期の処分を期待していた申請者が不安感、焦燥感を抱かされ内心の静穏な感情を害されるに至るであろうことは容易に予測できることであるから、処分庁には、こうした結果を回避すべき条理上の作為義務があるということができる。そして、処分庁が右の意味における作為義務に違反したといえるためには、客観的に処分庁がその処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分できなかったことだけでは足りず、その期間に比してさらに長期間にわたり遅延が続き、かつ、その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要である」

この判例から、処分庁には、結果を回避すべき条理上の作為義務があるとしているので、誤りとなります。


肢3 正

(最判昭和50年5月29日)

「仮に運輸審議会が、公聴会審理においてより具体的に上告人の申請計画の問題点を指摘し、この点に関する意見及び資料の提出を促したとしても、上告人において、運輸審議会の認定判断を左右するに足る意見及び資料を追加提出しうる可能性があったとは認め難いのである。してみると、右のような事情のもとにおいて、本件免許申請についての運輸審議会の審理手続における上記のごとき不備は、結局において、前記公聴会審理を要求する法の趣旨に違背する重大な違法とするには足りず、右審理の結果に基づく運輸審議会の決定(答申)自体に瑕疵があるということはできないから、右諮問を経てなされた運輸大臣の本件処分を違法として取り消す理由とはならないものといわなければならない。」


肢4 正

(最判昭和59年3月27日)

「国税犯則取締法上の質問調査の手続は、犯則嫌疑者については、自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項についても供述を求めることになるもので、「実質上刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する」ものというべきであつて、その趣旨に照らし、憲法三八条一項の規定による供述拒否権の保障が及ぶものと解するのが相当である。しかしながら、憲法三八条一項は供述拒否権の告知を義務づけるものではなく、右規定による保障の及ぶ手続について供述拒否権の告知を要するものとすべきかどうかは、その手続の趣旨・目的等により決められるべき立法政策の問題と解されるところから、国税犯則取締法に供述拒否権告知の規定を欠き、収税官吏が犯則嫌疑者に対し同法一条の規定に基づく質問をするにあたりあらかじめ右の告知をしなかつたからといつて、その質問手続が憲法三八条一項に違反することとなるものでない。」


肢5 正

(最判昭和49年12月10日)

「本件免職処分の議決には、その審議を秘密会でする旨の議決が完全な公開のもとにない会議で行われたという点において形式上公開違反の瑕疵があるとはいえ、右処分案件の議事手続全体との関係からみれば、その違反の程度及び態様は実質的に前記公開原則の趣旨目的に反するというに値いしないほど軽微であり、これをもって右免職処分の議決そのものを取り消すべき事由とするにはあたらないものと解するのが、相当である。」



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