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行政法 行政事件訴訟法 (H23-18) 


実質的当事者訴訟に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。


1 実質的当事者訴訟は、行政主体と一般市民との間における対等当事者としての法律関係に関する訴訟のうち、公法上の法律関係に関する訴訟であり、私法上の法律関係に関する訴訟は民事訴訟となる。

2 個別法の中に損失補償に関する規定がない場合であっても、憲法に直接基づいて損失補償を請求することが可能だと解されているが、この損失補償請求の訴訟は実質的当事者訴訟に該当する。

3 国に対して日本国籍を有することの確認を求める訴えを提起する場合、この確認の訴えは実質的当事者訴訟に該当する。

4 実質的当事者訴訟における原告勝訴の判決は、その事件について、被告だけでなく、関係行政機関をも拘束する。

5 実質的当事者訴訟の対象となる行政活動については、他の法律に特別の定めがある場合を除いて、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。


解答 5  



本問は、当事者訴訟についての条文問題ですが、少し細かいところです。行政法第14回テキストP325以下の解説で肢1と4の正誤を判断できます。肢3は、過去問(H19-19-オ)で正誤を判断できるでしょう。肢2で引っかかった方もいらっしゃるかもしれません。誤っても仕方がないでしょう。


1 正 3 正

「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟」を実質的当事者訴訟といいます。

ですから、肢1は正しいです。

実質的当事者訴訟には、例えば、無効確認訴訟のところでも出てきた免職処分の無効を前提とする公務員の身分確認訴訟や国立学校における学生退学処分の無効を前提とする在学関係確認の訴えなどがあります。

 その他、肢3のように国に対して日本国籍を有することの確認を求める訴えも含まれます。

 このように国に対して身分関係を確認する訴えは実質的当事者訴訟の一種なのです。

2 正

憲法でも勉強したように、個別法に損失補償に関する規定がない場合であっても、直接憲法第29条第3項を根拠として損失補償を請求することはできます(河川附近地制限令事件:最大判昭和43年11月27日)。

この損失補償請求訴訟は、私人が国に対してする訴訟であり、公法上の法律関係に関する訴訟なので実質的当事者訴訟に該当するのです。

これは少し難しいので覚えてく方がよいでしょう。

4 正

41条で33条を準用しているので拘束力もあります。

第41条 

1 第23条、第24条、第33条第1項及び第35条の規定は当事者訴訟について、第23条の2の規定は当事者訴訟における処分又は裁決の理由を明らかにする資料の提出について準用する。

5 誤

「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為について」は、民事保全法における仮処分については、とりわけ抗告訴訟においては執行停止が同様の機能を有するので排除されています。

あえて民事保全法における仮処分を適用する必要がないのです。

もっとも、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」以外の場合は、民事保全法における仮処分を適用する余地があります。

例えば、本問のような当事者訴訟は、執行停止を準用しておらず(41条)、また権利主体が対等な立場で権利関係を争う権利訴訟であり、訴訟の構造や審理手続は、通常の民事訴訟と基本的に同じだからです。

(仮処分の排除)

第44条

 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法(平成元年法律第91号)に規定する仮処分をすることができない。




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