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民法 総則 (H22-27)


AがBに対してA所有の動産を譲渡する旨の意思表示をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。


1 Aが、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合、Aは当然に成年被後見人であるから、制限行為能力者であることを理由として当該意思表示に基づく譲渡契約を取り消すことができる。

2 Aが、被保佐人であり、当該意思表示に基づく譲渡契約の締結につき保佐人の同意を得ていない場合、Aおよび保佐人は常に譲渡契約を取り消すことができる。

3この動産が骨董品であり、Aが、鑑定人の故意に行った虚偽の鑑定結果に騙された結果、Bに対して時価よりも相当程度安価で当該動産を譲渡するという意思表示をした場合、Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず、Aは当該意思表示を取り消すことができない。

4 Aが、高額な動産を妻に内緒で購入したことをとがめられたため、その場を取り繕うために、その場にたまたま居合わせたBを引き合いに出し、世話になっているBに贈与するつもりで購入したものだと言って、贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効である。

5 Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡したことにしていたところ、Bが事情を知らないCに売却した場合、Cに過失があるときには、Aは、Cに対してA・B間の譲渡契約の無効を主張できる。


解答 4 


制限行為能力と意思表示のところを横断的に問う問題ですが、条文そのままなので非常に簡単な問題です。


1 誤

この問題では、「当然に」という部分がポイントです。この「当然に」という言葉から『後見開始の審判を受けなくても「当然に」成年被後見人である』という部分が正しいかどうかを聞いているのだろうと見抜けなければなりません。成年被後見人となるためには、必ず家庭裁判所の審判が必要ですから、誤りとなります。


2 誤

この問題のポイントは、「常に」譲渡契約を取り消すことができる、という部分です。「常に」であれば、一つの例外も許さないわけですから、問題文の中身をみなくても誤りとなる可能性が高いという点に気づいて欲しいです。

被保佐人が、保佐人の同意を得なければ取り消しの対象となる行為は、民法第13条1項に列挙されている事項に限定されています。

ですから、何でもかんでも保佐人の同意を得なければならないわけではないのです。

よって、誤りです。


3 誤

 まずこの問題では、ABという売買契約の当事者以外の第三者である鑑定人が詐欺行為をしているので、第三者詐欺(96条2項)の問題であることに気づけるかどうかがポイントとなります。

それに気づいた上で、後は「Bがこの事情を知っているか否かにかかわらず」という部分で正誤の判断ができるかどうかです。

第三者である鑑定人がAを騙して契約させたことについて、Bがその詐欺についての事情を知っているならば、その限りにおいて、Aは契約を取り消すことができるのです。

96条2項でも、「相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。」として、悪意の場合に限定して例外的に取消を認めていることに注意しましょう。条文そのままですので容易に正誤の判断をして欲しい問題です。


4 正 

この文章の事実からどの部分がポイントとなるのかをまず探すことが先決です。

「Aが、高額な動産を妻に内緒で購入したことをとがめられたため、その場を取り繕うために、その場にたまたま居合わせたBを引き合いに出し、世話になっている」

この文章はあってもなくても正解に関係しないことがわかっていただきたいです。

残りの「Bに贈与するつもりで購入したものだと言って、贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した場合、当該意思表示は原則として有効である。」という文章から、心裡留保の問題であることはわかるでしょう。

特に『贈与するつもりがないのに「差し上げます」と引き渡した』というところから心裡留保であるとわかって欲しいです。

そうすると、心裡留保は原則有効ですから、4は正しいということです。

この問題文を簡略化すると「心裡留保は原則有効ですか」という問題に置き換えられます。

長い文章に騙されずに出題の意図を把握するようしましょう。


5 誤

 この問題は、「Aが、差押えを免れるためにBと謀って動産をBに譲渡した」という部分から虚偽表示の問題であることにすぐに気がついてほしい問題です。その上で、以下の94条2項の条文から、Cが善意の第三者であれば過失があっても対抗できないことを思い出していただければ容易に正解できたでしょう。では、なぜ善意であれば第三者は保護され、無過失の要件までは課されていないのかについてはテキストを参照しておいてください。


(虚偽表示)

第94条

1相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。



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