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行政法 行政不服審査法 (H22-15改題)


行政不服審査法における手続の終了に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。


1 行政不服審査制度には権利保護機能の他に行政統治機能があるため、審査庁の同意がなければ、審査請求人は審査請求を取り下げることができない。 

2事実行為に関する審査請求を認容する場合、処分庁である審査庁は、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更することはできない。

3上級行政庁としての審査庁は、処分庁の処分を変更する旨の裁決をすることができず、処分庁の処分を取り消した上で、処分庁に当該処分の変更を命じなければならない。

4不作為についての審査請求が理由がある場合には、不作為庁である審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言し、不作為庁である審査庁は、当該申請に対して一定の処分をする。

5 行政不服審査法には、それに基づく裁決について、行政事件訴訟法が定める取消判決の拘束力に相当する規定は設けられていない。


解答 4  


テキストP203~215


1 誤

審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることができます(27条)。

2 誤

事実行為に関する審査請求を認容する場合、処分庁である審査庁は、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更することはできる(47条)。

3 誤

行政不服審査法46条1項からの出題です。


「第46条 

1 処分(事実上の行為を除く。以下この条及び第四十八条において同じ。)についての審査請求が理由がある場合(前条第三項の規定の適用がある場合を除く。)には、審査庁は、裁決で、当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することはできない。

2 前項の規定により法令に基づく申請を却下し、又は棄却する処分の全部又は一部を取り消す場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとる。

一 処分庁の上級行政庁である審査庁 当該処分庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。

二 処分庁である審査庁 当該処分をすること。」


まず、46条1項の処分は、不利益処分(処分を受ける者にとって不利な処分)と考えるとわかりやすいでしょう。

例えば、ある飲食店経営者Aが行政庁に飲食店の営業禁止処分(不利益処分)を受けた場合、それを不当だとしてAが審査請求をし、それが理由があるとして認められた場合、認容裁決がでます。この裁決でその営業禁止処分を取消すことができます。これにより、Aは営業を再開できます。また、営業禁止処分からより軽い営業停止処分へと変更することができます。これにより、Aは停止期間が終了すれば営業を再開することができます。

このように、不利益処分に対する審査請求に理由がある場合は、審査庁(上級行政庁または処分庁)は、自ら認容裁決をすることによって不利益処分を取り消したり、変更したりすることができるのです。これらを取消裁決、変更裁決といいます。

次に46条2項は、利益処分(申請者にとって有利な処分)と考えるとわかりやすいでしょう。

例えば、ある飲食店経営者Bが行政庁に飲食店の営業許可(利益処分)を求めて申請したところ、行政庁にその申請が却下されたとしましょう。それを不当だとしてBが審査請求をし、それが理由があるとして認められた場合、認容裁決がでます。この場合に、行政庁がその却下処分を取り消したとしても、申請がなされた状態に戻るだけで、許可処分がなされた状態になるわけではありません。 

そして許可処分をすることができるのは処分庁なので、上級行政庁が審査庁であれば、指揮監督権を有することから、処分庁に対してBに対する営業を認めるよう許可処分を命じるのです。処分庁自身が審査庁であれば、自ら営業許可処分をすることができるのです。

以上より、問題文に戻ると、46条1項を問う問題となっています。上級行政庁は不利益処分(46条1項)の審査請求の場合であれば、自らその処分の変更裁決をすることができます。ですから、わざわざ処分庁の処分を取り消した上で、処分庁に当該処分の変更を命じなければならないわけではないのです。


なお、47条との比較も解説しておきます。


「第47条 

事実上の行為についての審査請求が理由がある場合(第四十五条第三項の規定の適用がある場合を除く。)には、審査庁は、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言するとともに、次の各号に掲げる審査庁の区分に応じ、当該各号に定める措置をとる。ただし、審査庁が処分庁の上級行政庁以外の審査庁である場合には、当該事実上の行為を変更すべき旨を命ずることはできない。

一 処分庁以外の審査庁 当該処分庁に対し、当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すべき旨を命ずること。

二 処分庁である審査庁 当該事実上の行為の全部若しくは一部を撤廃し、又はこれを変更すること。」


ところで47条は、上記46条2項の場合と似ていますが、事実上の行為についての審査請求が理由がある場合です。事実上の行為についての審査請求が理由がある場合、これは処分という何らかの法効果が生じるものではなく、ある事実状態が継続しているだけなので、取り消したり変更したりしても無意味であってできません。ですので、裁決で、当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言する、つまりこの行政庁がやっている事実上の行為は違法だと裁決の中で主張しつつ、違法だというだけでは何も変わらないため、上級行政庁が審査庁であれば、指揮監督権を有することから、処分庁に対してその事実行為を撤廃(やめる)あるいは変更するよう命じるのです。平たく言うと、処分庁のやってる事実行為は違法でしょ、だからやめなさい、別の適法行為に変更しなさい、と命じるのです。事実行為をやっているのは処分庁なので処分庁がそれをやめるか変更するかしないとその事実状態がなくならないからです。処分庁が審査庁であれば、自らその事実行為をやめればいいだけですね。

このように、審査庁が自ら処分できる場合とできない場合(命ずるだけの場合)があるということを押さえておきましょう。

4 正

不作為についての審査請求が理由がある場合には、不作為庁である審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言し、不作為庁である審査庁は、当該申請に対して一定の処分をする(49条3項)。

5 誤

裁決は、関係行政庁を拘束します(52条)。

いわゆる拘束力です。具体的には2項以下で規定されています。

①申請に基づいてした処分が裁決で取り消されたとき

②申請を却下したとき

③申請を棄却した処分が取り消されたとき

申請通りの適法な処分をすべきというのが審査庁の判断であるため、処分庁は、その裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならないのです。

したがって、取消判決の拘束力に相当する規定が設けられているのです。



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