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憲法 統治 (H18-22)


以下の記述のうち、妥当なものはいくつあるか。


1 河川法の適用されない普通河川の管理について、条例により河川法が同法の適用される河川等について定めるところ以上に強力な規制をすることは許されない。

2 財産権の行使については国の法律によって統一的に規制しようとするのが憲法29条2項の趣旨であるから、条例による財産権規制は、法律の特別な授権がある場合に限られる。

3 条例によって健全な風俗を害する行為を規制することは許されるが、規制の程度、態様等によっては、他の地方公共団体との関係で平等原則違反が問題になる。

4 条例で罰則を制定する場合は、法律による委任がなくてはならないが、相当程度具体的な委任であればよい。

5 条例によって地方公共の安寧と秩序を維持する規制を行うことは許されるが、国の法令による規制とその目的が同一であったり、部分的に共通するような規制を行うことは許されない。


解答 2 


(肢1) 正

条例制定権の限界に関する問題です。

まず、条例は法律の範囲内で定めなければなりません(憲法94条)。

では、法律の範囲内かどうかは、どのように判断するのでしょうか。

この判断基準を示したのが、憲法の問題で出題される徳島市公安条例事件です。

この判例では、条例が法律の趣旨、目的、内容、効果の点で、法律と矛盾抵触しているかどうかの場合の判断基準が具体的に示されています。簡潔にまとめると以下のようになります。

①法令が明文にない場合

法令がないということが、法令で規制せずに放置する趣旨ならば、条例で規制することは法令違反になる。

②法令が明文にある場合

(ア) 法令とは別の目的で条例を制定する場合

法令の目的・効果を阻害しないのなら矛盾抵触しない。

(イ) 法令とは同一の目的で条例を制定する場合

全国一律に規制する趣旨ではなく、地方の特殊事情に応じて規制することを容認する趣旨であるなら、矛盾抵触しない。

この問題は、条例が河川法よりも強力な規制をすることができるかどうかを問うています。

そのため、法律よりも厳格な規制である、いわゆる上乗せ条例は法律の範囲内なのか、というのが問題となりますね

上記の①の基準からすると、河川法で適用されていないことが、法令で規制せずに放置する趣旨かどうかは問題文から明らかではありません。

また、条例は法律の範囲内ならば、制定することができるとすると、法律がない以上、条例で自由に制定してもよいと解釈することもできます。

ですから、肢1に関しては、肢1に出てきた判例を知らなければ、解答は難しいですね。

これの判断をしたのが、S53.12.21の判例です。

この判例によると、現時点で普通河川が河川法の対象となっていなくても、普通河川は、指定によって、いつでも河川法の対象になりえるものなのです。

そうすると、普通河川についても河川法で定められた管理以上に強力な河川管理は施さない趣旨であると解されるのです。

このような河川法の趣旨からすると、条例で河川法以上に強力な河川管理の定めをすることは、上記の趣旨に反し、河川法と矛盾抵触することになるので、許されないということなのです。

このように、条例と法律の関係は、個別具体的に判断されるものなのです。よって、正しいです。


(肢2) 誤

まず、条例は法律の範囲内ならば、制定することができるということを押さえてください。

これは、憲法94条を受けて、地方自治法14条1項に規定されています。

その上で、問題文にあるように財産権の行使について条例を制定する場合に、法律による特別の授権は必要なのでしょうか。

条例は地方公共団体の住民が直接選挙で選んだ議会で制定されますから、民主的な手続きに則っている、いわば小さな国会であり、条例は法律に含めることができるのです。

ですから、条例の制定について法律の範囲内であれば、原則として特に国から特別の授権をうけずとも問題ありません。

この点が、法律による委任が必要である行政の制定する政令などとは異なるのです。よって、誤りです。


(肢3) 誤

法律というのは全国一律に適用されるものです。

これに対して、条例というのはその地方の特殊事情に合わせて制定するものです。

例えば、北海道と沖縄では、面積も人口も気候も歴史、文化、習慣などもかなり違いますし、また北海道といっても広いですから、北と南にある市町村では様々違ってきますから、その地方の特殊事情に合わせた条例が必要となってくるのです。

ですから、条例というのは、そもそもその地方の特殊事情を考慮したものですから、地方間で多少条例の中身が変わってくるのは当然なことなのです。

それゆえ、条例によって健全な風俗を害する行為を規制する場合、その規制の程度、態様等が地方間で異なっても、平等原則に違反しません。よって、誤りです。


(肢4) 正

罰則は人身の自由や意思を奪うものであり、人権侵害の最たるものです。

そのため、単に経済的な規制を受ける財産権の行使の場合と異なり、条例で罰則の規定を定める場合は法律による委任が必要であると解されています。

ただし、個別具体的な委任までは必要ないと解されています。

法律による授権が相当程度に具体的であり、限定されていればよいのです。

よって、正しいです。


(肢5) 誤

肢1で解説した②(イ)の基準から肢5を見ると、同一の目的であっても、地方の特殊事情に応じて規制することを容認する趣旨であるなら、矛盾抵触しないということです。

少し覚えるのが大変かもしれませんので、まずは、条例が法律の趣旨、目的、内容、効果の点で、法律と矛盾抵触しているかどうかで条例制定の可否が決まることを、しっかり押さえてください。

これさえ知っていれば、肢5は切れます。

条例によって、国の法令による規制とその目的が同一または、部分的に共通するような規制であっても、条例が法律の趣旨、目的、内容、効果の点で、法律と矛盾抵触していなければ、条例を制定できます。

よって、誤りです。




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