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行政法 行政事件訴訟法 (H27-17) 



行政事件訴訟法の定める執行停止に関する次の記述のうち、妥当な記述はどれか。


1 処分の執行停止の申立ては、当該処分に対して取消訴訟を提起した者だけではなく、それに対して差止訴訟を提起した者もなすことができる。

2 処分の執行停止の申立ては、本案訴訟の提起と同時になさなければならず、それ以前あるいはそれ以後になすことは認められない。

3 本案訴訟を審理する裁判所は、原告が申し立てた場合のほか、必要があると認めた場合には、職権で処分の執行停止をすることができる。

4 処分の執行の停止は、処分の効力の停止や手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない。

5 処分の執行停止に関する決定をなすにあたり、裁判所は、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならないが、口頭弁論を経る必要はない。



解答 5  


過去問でもおなじみの執行不停止の原則の基本的な問題ですので、是非とも正解したいところです。暗記に頼らず理由を含めて理解して覚えるようにしましょう。


テキストP312~


肢1  誤

差止訴訟の要件には、「重大な損害を生ずるおそれ」が必要であり、処分後に取消訴訟および執行停止ができるのであれば、処分前に差止めるほどの重大な損害がないと判断され、この要件は満たさないと解されています。

そういう意味で、処分前に差止訴訟をするか、処分後に取消訴訟および執行停止をするかは択一的なのです。そのため、差止訴訟には、執行停止が準用されていないのです。単に準用されていないから、という理由しか記載されていない解説集もあるようですが、それではなぜ準用されていないのかわかりませんので、しっかり上記の理由も合わせて押えておきましょう。

『第38条  

第十一条から第十三条まで、第十六条から第十九条まで、第二十一条から第二十三条まで、第二十四条、第三十三条及び第三十五条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟について準用する。』

なお、執行停止というのは、処分後に取消訴訟を提起した場合、執行不停止の原則(25条1項)から、処分の執行は進んでいきますから、その進行を止めるために訴訟の継続中に申立てをして認められれば、その執行が停止されるものです。(25条2項)。

そして、執行停止は、処分の執行という作為を止めさせるものであります。つまり、これは、処分後の事後的な仮の差止と同じなのです。

ですから、仮の差止と執行停止の関係は事前と事後の関係なのです。

合わせて押えておきましょう。

肢2  誤

25条2項本文からの出題です。

執行停止は、取消訴訟(または無効確認等訴訟)の審理の中で決定されるものなので、これらの訴訟が係属していることが前提であり、訴訟の係属なしに単独で執行停止がなされることはありません。

訴訟が係属中であればよいので、本案訴訟の提起と同時になさなければならないわけではありません。

肢3  誤

25条2項本文からの出題です。

行政事件訴訟法の執行停止については、裁判所は処分庁の監督機関ではなく、処分庁に対して一般的指揮監督権を有するわけではありません。

裁判所はあくまでも第三者的立場で公平かつ客観的に判断するので職権で執行停止をすることはできないのです。

できるとすると、裁判所が行政権に介入することになるので三権分立に反することにもなるのです。ですから、申立てのみによって、裁判所は執行停止することができるのです。

これに対して、行政不服審査法においては、処分庁の上級行政庁である審査庁は、処分庁に対して一般的指揮監督権を有するから、職権に基づく執行停止も一般的指揮権の発動として正当化されるのです。

行政事件訴訟法と行政不服審査法との違いを押さえておいてください。

肢4  誤

25条2項但書からの出題です。

処分の効力は、最も包括的なものであるため、処分の効力が停止されれば、処分の効力の実行である処分の執行や手続の続行もすることができなくなります。そのため、より緩やかな手段があるならば、処分の効力の停止はできるだけ避けるべきであるとされているのです2項但書)。

肢5  正

25条6項からの出題です。

執行停止の決定は、迅速になされるものなので口頭弁論を経ないですることができます。ただし、執行停止の決定によって、処分の執行が停止するという重大な結果が生じるので、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならないとされています。




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