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商法・会社法 (H25-40)


会社法上の公開会社における資金調達に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。


1 特定の者を引受人として募集株式を発行する場合には、払込金額の多寡を問わず、募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。

2 株主に株式の割当てを受ける権利を与えて募集株式を発行する場合には、募集事項の通知は、公告をもってこれに代えることができる。

3 募集株式一株と引換えに払い込む金額については、募集事項の決定時に、確定した額を決定しなければならない。

4 会社が委員会設置会社である場合には、取締役会決議により、多額の借入れの決定権限を執行役に委任することができる。

5 募集社債の払込金額が募集社債を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、株主総会の決議によらなければならない。



解答 4


テキストP168~、P173~


肢1 誤

公開会社においては、株式発行は取締役会の決議でできます。

しかし、公開会社において第三者に対して株式を発行すれば、既存株主以外に株式が割り当てられるので、既存株主の持株比率が低下し議決権等の会社支配権が低下します。

また、多数の株式を発行することで既存株主の保有する株式の経済的価値も低下します。

とりわけ株式を市場よりも安価で発行する有利発行の場合は、既存株主の株式の経済的価値が下がってしまうので、このような有利発行をする場合は、株主に理由を説明し(199条3項)、株主の意見を聞かなければならないのです。

そのため、公開会社において株主総会の特別決議が必要なのです(199条2項3項 201条1項)。

以上より、公開会社においては、株式発行は取締役会の決議でできますが、第三者に対して株式を有利発行する場合、株主総会の特別決議が必要なのです。

肢2 誤

 株主割当てによる募集の場合には、定款に定めがあれば、基本的に取締役もしくは取締役会で募集事項を決定することができます(202条3項各号)。

申込期日の2週間前までに株主に通知することになります(202条4項)。

この通知は、第三者への発行の場合と異なり、公告によることはできません(202条5項)。

肢3 誤

株式会社は、その発行する株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式について募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。)又はその算定方法を定めなければならない(199条1項2号)。

 また、取締役会の決議によって募集事項を定める場合において、市場価格のある株式を引き受ける者の募集をするときは、公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法を定めることができる(201条2項)。

 以上より、確定した額=払込金額以外にも、算定方法や適当な払込金額の決定の方法を定めることができるのです。

肢4 正

多額の借財については、委員会設置会社以外の公開会社において取締役会は決定を取締役に委任することはできません(362条4項2号)。

委員会設置会社以外の公開会社において取締役会は業務執行決定機関であり、会社の財産的基礎や経営にとって重要な事項なので取締役の単独の判断に任せられないからです。これに対して、委員会設置会社においては、取締役会の決議によって選任された執行役が業務執行を行うので、取締役は取締役会の構成員として執行役等の職務の執行を監督し、委員会の委員として活動するので、業務執行をすることはできません。そのため、委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、委員会設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができるとされています。

第416条4項

委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、委員会設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。

この場合、執行役は、業務執行の決定および具体的な業務執行を行います。取締役会は、基本的な業務執行の決定をする以外は、主に執行役の監視・監督が中心となります。

執行役=業務執行、取締役会=監視・監督という役割分担となります。

このように業務執行と監督を分離して、取締役会の監督機能の強化および執行役の業務執行の効率性の向上を図るのです。

したがって、委員会設置会社の取締役会は、その決議によって、委員会設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができるので、多額の借財についても委任することができるのです(416条4項本文)。

肢5 誤

 肢1の通り、株式を市場よりも安価で発行する有利発行の場合は、既存株主の株式の経済的価値が下がってしまうので、このような有利発行をする場合は、公開会社において株主総会の特別決議が必要です(199条2項3項 201条1項)。

これに対して、社債は、あくまでも会社の借金であるため、発行しても既存株主の株式の経済的価値に影響をもたらしません。

したがって、原則どおり、社債の発行には取締役会設置会社では、取締役会の決議が必要であるものの(362条4項5号)、株主総会の決議までは必要ないのです。





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