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行政法 行政不服審査法 (H25-14改題)


行政不服審査法(以下「行審法」という。)と行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)の比較に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。


1 行訴法は、行政庁が処分をすべき旨を命ずることを求める訴訟として「義務付けの訴え」を設けているが、行審法においても、審査請求が認容される場合、義務付け裁決を明示的に定めている。

2 行審法も行訴法も、処分には公権力の行使に当たる事実上の行為で継続的性質を有するものが含まれると解釈されているが、どちらも、このような行為が処分に当たるとは明示的には定めていない。

3 行訴法は、取消訴訟の原告適格を処分等の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」に認めているが、行審法は、このような者に不服申立て適格が認められることを明示的には定めていない。

4 行訴法は、訴訟の結果により権利を害される第三者の訴訟参加に関する規定を置いているが、行審法は、利害関係人の不服申立てへの参加について明示的には定めていない。

5 行訴法は、取消訴訟における取消しの理由の制限として、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由とすることはできないと定めているが、行審法は、このような理由の制限を明示的には定めていない。


解答 4  


テキストP238~など


肢1 正

不作為の違法確認訴訟では、違法を確認するだけで、行政庁になんらかの行為を命じることはできません。

そのため、2号義務付け訴訟と併合提起して、行政庁になんらかの行為を命じることができるようにしているのです(行政事件訴訟法第3条6項2号、第36条の3)。

(49条3項)

不作為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言する。この場合において、次の各号に掲げる審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該各号に定める措置をとる。

一. 不作為庁の上級行政庁である審査庁 当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずること。

二. 不作為庁である審査庁 当該処分をすること。

不作為についての審査請求が理由がある場合には、審査庁は、裁決で、当該不作為が違法又は不当である旨を宣言する。改正法により、この場合において、不作為庁の上級行政庁である審査庁は、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、当該不作為庁に対し、当該処分をすべき旨を命ずる、と規定されました。

肢2 正

行政不服審査法における処分も、行政事件訴訟法における処分も「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」と定義し、事実行為については明文で規定されてはいません。

しかし、通説・判例ではどちらの「処分」にも、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有する事実行為もその対象となると解されているのです。

 なお、改正前は、人の収容、物の留置その他その内容が継続的性質を有する事実行為が処分として規定されていました。

肢3 正

まず、行政事件訴訟法においては、同法9条で当事者適格(原告適格)が規定されています。

第9条 

1処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

当事者適格とは、当事者能力があることを前提に、特定の争訟において当事者として承認される具体的な地位ないし資格をいいます。

これに対して、行政不服審査法においては、明文上当事者適格は規定されていませんが、解釈上、当事者適格が必要であると考えられています。

違法・不当な処分を取消すことによって、侵害された自己の権利利益の回復が得られる者、つまり不服申立ての利益を有する者だけが審査請求をすることができるのです。

このような利益を法律上の利益といい、法律上の利益を有する者でなければ不服申立てをすることができないのです。

例えば、不利益処分を受けた者は、原則として当事者適格を有します。

これにより、不服申立てをすることができる主体が絞られることになりますね。当事者適格があって初めて不服申立てをすることができ、なければ却下されるのです。

肢4 誤

行政不服審査法においても参加人という制度があります(13条1項)。

不服申立てをすることができるのが、処分された当事者であるのは当然です。

当事者のみならず処分の取消や維持によって、直接自己の権利利益に実質的な不利益を蒙る者も不服申立てすることが目的に資するのです。

ですから、このような不利益を蒙る者も利害関係人として審査請求に参加することができるのです。ただし、利害関係人というのはどこまでも拡大していく可能性がありますから、本当に利害関係人かどうか確認する必要があります。そのため、審査請求に参加する場合は、原則として審理員の許可を得る必要があるのです。

したがって、不服申立てを審査する審理員は、申請した利害関係人に、参加人として不服申立てに参加することを許可する権限を有するのです。

これに対して、行政事件訴訟法においても第三者が訴訟に参加することができます(22条)。

つまり、処分の取消や維持の判決によって、直接自己の権利利益に実質的な不利益を蒙る者も訴訟に参加することができるのです。このような不利益を蒙る者も訴訟に参加させることで紛争を一挙に解決することができるからです。

この場合、裁判所は、第三者の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その第三者を訴訟に参加させることができ、この決定をするには、あらかじめ、当事者及び第三者の意見をきかなければならないとされています。

このように、両方の法律において参加人について規定がされているので誤りです。

肢5  正

行政事件訴訟法において取消しの理由の制限が規定されています。

第10条1項

 取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。

これに対して、行政不服審査法にはこのような規定はありません。行政不服審査法では処分の不当性が問題となるからです。




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