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民法 債権(H18-33)


Aはその所有する建物をBに賃貸し、BはAの承諾を得てその建物をCに転貸している。この状況の下で、A・B間の賃貸借契約が終了したので、AはCに建物の明渡しを求めたいと考えている。A・C間の法律関係に関する次のア~オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。


ア A・Bが賃貸借契約を合意解除した場合には、AはそれをCに対抗することができる。

イ Bが賃借権を放棄した場合には、AはそれをCに対抗することができない。

ウ Bの債務不履行によってA・B間の賃貸惜契約が解除された場合には、AはあらかじめCに催告をしなくてもCに対抗することができる。

エ A・B間の賃貸借契約が期間満了によって終了した場合には、AはCにその旨を通知しなくても、それをCに対抗することができる。

オ Aからの正当事由を伴う解約申し入れによりA・B間の賃貸借契約が終了した場合には、AはCにその旨を通知しなければ、それをCに対抗することができない。


1 ア・イ

2 ア・ウ

3 ア・エ

4 イ・ウ

5 エ・オ


解答 3


本問は、基本的な知識だけで何とか解けないかという解き方の訓練として解説していきます。

組合せ問題は2つ又は3つの問題の肢について正確な知識があれば解ける問題ですが、肢の正確な知識がなくても解ける場合もあるのです。それが本問です。

まず、賃貸借の問題がでたら、借地借家法についても聞かれていないかアンテナを張ってください。

この問題は建物をA→B→Cへ転貸借するというものですが、この時点で民法と借地借家法の問題かなと予測が立てられると思います。

実際に問題の肢をみると、民法と借地借家法の肢に分別できるはずですが、どうでしょう。

ア、イ、ウが民法 エ、オが借地借家法の肢になります。

転貸借について民法では612条と613条でしか規定されていないので、それ以外の転貸借の問題が出てきた場合は、借地借家法の問題であると予測していただきたいのです。

具体的には、エに期間満了、通知、オに、正当事由、解約申し入れ、通知というキーワードがあるのでエ、オが借地借家法の話になります。

逆に、ア、イ、ウには特に借地借家法が適用されるキーワードが出ていないので、借地借家法の一般法である民法の話だなとわかるわけです。

借地借家法は民法の特別法なので、借地借家法が適用されない場合は民法が適用されるということです。

そして、ア~オの各問題の肢の文末を読むと「対抗」というキーワードが出てきます。

ここで、出題意図は転借人に対抗できるか否かということがわかります。

実はア、イ、ウが民法 エ、オが借地借家法の肢であり、出題意図がわかった時点でもう答えはほぼでているんです。

後は確認するだけなんです。なぜかわかるでしょうか。

まず一般的な解説書を読むとほとんどが、アは合意解除(判例)、イは民法398条類推、ウは債務不履行(判例)、エ、オは借地借家法34条1項と書かれています。

このような解説書を読んで単に丸暗記の復習をしていませんか。

もちろん確実に肢を切る上で正確な知識は重要です。

しかし、もしこのような知識がなければ解答を出せないかというと違うのです。

ヒントは、民法が何のためにある法律かということと、民法と借地借家法との関係です。

では、大きな視点から問題を考えてみましょう。

出題意図は転借人に対抗できるか否かと書きましたが、もっとわかりやすくいいますと、賃貸人Aと転借人Cのどちらを保護するほうが公平かということです。

民法が私法上の関係を公平の観点から規律していくものであることは皆さんも最初に勉強したと思います。

つまり、当事者間または当事者および第三者間の公平をいかに図るかが民法を理解していく出発点であるということです。

そして、借地借家法は民法の特別法であって、民法よりも借主をより厚く保護するために出来た法律です。

民法しかなければ、経済力のある地主たる賃貸人が民法の及ばない条件を提示してきた場合、経済力の乏しい借主は生活の基盤である住む場所を確保するためにその条件で借りなければなりません。

そのような不公平を是正するために借地借家法ができたのです。

このように民法による保護では不十分な場合があるので借地借家法があるのです。

そうすると、本問ではエ、オは借地借家法の問題ですので、転借人Cが民法よりも保護されてなくてはならないです。

これに対して、ア、イ、ウは民法の問題ですから、民法の及ぶ範囲で賃貸人Aと転借人Cのどちらを保護するほうが公平かを考えればよいのです。

では、まずア、イ、ウの問題の肢から具体的に検討していきましょう。


(ウ)

ウからやりましょう。

A=貸主側 B,C=借主側となります(BもCに対しては貸主であるがAの建物の借主である点で共通しているからです)。

Bに債務不履行があります。

おそらくBにはAに賃料を払わないなどの帰責性があるのでしょう。

AB間の賃貸借契約を解除をしているので、それを前提とする転貸借契約も終了するはずです。

ただ、AがCに対してあらかじめ催告する必要があるのかどうかが問題となります。

Bの債務不履行で解除したのだから、公平を保つには借主側よりも貸主側を保護すべきです。

解除の際のCへの催告は、Cがもう建物を借りられなくなることの事前通知みたいなものですが、もし、この催告が要件となると、Cにとってはこの催告がなければ借主だと主張し続けることが出来るのですから有利となります。

これに対して、Aにとって自分は何も悪くないのに催告という手続きをしないとCから建物を返還できないことになり不利益となります。

ですからAを保護する必要性が出てくるのです。

もっともCにも帰責性がないのに不公平だとも考えられますが、CはBという人間を信用して借りている以上、B側の人間として扱われAより保護する必要性が低いのです。

以上よりAはCに催告しなくても対抗できると考えられるので、ウは妥当なのです。


(アとイ)

次にアとイです。

合意解除と放棄は、原因は異なりますが結果としてBの賃借権が消滅し、Cが建物を利用できなくなる点は共通しています。

CはBの賃借権を前提に転借しているからです。いわば親子関係にあります。

合意解除はいわば解除契約であり契約自由の原則から自由ですし、権利の放棄も権利である以上放棄することも自由ですからBには何の帰責性はありません。

Aにも帰責性はありません。

しかし、Cが建物を利用できなくなるという不利益のみがあるのです。

そうすると、Cを保護するのが公平ですよね。

ですから合意解除と放棄は転借人Cに対抗できないと考えるのです。

以上からアは妥当でなく、イは妥当なのです。

なお、合意解除と放棄は、Cが建物を利用できなくなる点で共通しているのに、合意解除は「Cに対抗することができる」とし、放棄は「Cに対抗することができない」と矛盾した内容になっていることから、どちらかが誤りだと予測がつけられるでしょう。

こうした予測は肢を切るときにとても大事なポイントになりますので意識して問題を解くようにしましょう。


(エとオ)

最後にエとオです。

期間満了であれ、解約申し入れであれ、AB間の賃貸借が終了する点が共通しています。

にもかかわらず、エは「AはCにその旨を通知しなくても対抗できる」とあり、オは「AはCにその旨を通知しなければ対抗できない」と逆の結論になっています。

そうするとどちらかが誤りであることが推測できます。

どちらが誤りなのでしょうか。

AB間の賃貸借が終了すれば、AB間の賃貸借を前提とするBC間の転貸借も終了するので転借人Cにとって不利益です。

そして、借地借家法は民法よりも借主をより厚く保護するために出来た法律です。

そうするとCに通知しないと対抗できないとしたほうがCをより厚く保護することになります。

そこで、期間満了であれ、解約申し入れであれ、AはCにその旨を通知しないと対抗できないとするのが公平でしょう。

よって、エは妥当でなく、オは妥当であると判断できるのです。

したがって、正解は3のアとエになります。

以上のように、民法と借地借家法の関係、出題意図がわかれば、後は民法の大原則と借地借家法の意義から賃貸人と転借人のどちらを保護するのが公平かを考えていけば、一般の解説書にある正確な知識がなくても正解が出せるのです。




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