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行政法 行政不服審査法 (H20-14改題)


行政上の不服申立てについての次の記述のうち、妥当なものはどれか。


1 行政上の不服申立ての道を開くことは、憲法上の要請ではないので、この制度を廃止しても、憲法違反とはならない。

2 明治憲法下で行政上の不服申立てを定めていた訴願法は、行政裁判法と同時期に制定され、これと同時に廃止された。

3 行政不服審査法は、行政事件訴訟法とともに、戦後改革の一環として、現行憲法の制定と同じ時期に制定された。

4 憲法は、行政機関が裁判を行うことを禁止しているから、裁判手続に類似した行政上の不服申立てを整備することによって地方裁判所における審級を省略することは許されない。

5 憲法による法定手続の保障の趣旨は、行政上の不服申立ての手続にも及ぶので、その手続においても、聴聞・弁明手続がとられている。



解答 1 


テキストP154~163


1 正

憲法には裁判を受ける権利について規定されています。

第32条「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」

憲法の目的は人権保障です。

本来なら、選挙を通じて国民の代表たる国会議員を選出し、国会による立法や内閣による政治判断によって人権保障が図られることが民主国家にとって理想的なことです。

しかし、国会や内閣による政治判断というのは、多数決で決まりますから、多数決から漏れてしまった少数者の人権保障については、どうしても後回しにされてしまいがちです。民主主義の原理からすればある程度仕方がないことです。だからといって、少数者の人権保障を無視するわけにはいきません。

なぜなら、個人の人権は最大限尊重されるべきだからです(憲法13条)。

そのため、憲法では、民主主義では救済されない少数者の人権保障の最後の砦として裁判所において裁判を受ける権利を奪はれないとされているのです。これが自由主義的な考え方です。

憲法は、自由主義を基調として、最低限度、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれないとしているのです。

このように憲法では、最低限度について規定されていますが、それ以上のことについては何も規定されていません。

ですから、裁判所において裁判を受ける権利を奪うような法律は違憲ですが、より人権保障となるような手続を法律で制定したり、廃止したりすることについては、憲法の予定するところではなく、その時代、その社会における政治的な判断によってなされるべき事柄なのです。

憲法だけであれば、行政による人権侵害があった場合、裁判で争うことができれば十分なので、行政事件訴訟法のような法律があればよいことになります。

しかし、裁判には費用と時間がかかります。

そこで、裁判より簡易迅速な手続による国民の権利利益を図る制度があれば国民にとってより便利ですね。

そこで制定されたのが行政不服審査法なのです。

このように、行政不服審査法は、ある意味において憲法プラスアルファの人権保障のための制度なのです。

そのため、憲法上の要請そのものではないので、行政不服審査法の制定・改正・廃止については、その時代、その社会における政治的な判断によって自由にすることができるのです。

極端に言うと、裁判所が全国に沢山作られ、今まで以上に簡易迅速に裁判できるようになるならば、行政庁による判断である行政不服審査法など不要になるかもしれません。

ですから、行政上の不服申立ての道を開くことは、憲法上の要請ではないので、この制度を廃止しても、憲法違反とはならないのです。このように、憲法から考えれば正解を導くことができますね。そういう意味で本問は事実上憲法の問題といっていいでしょう。

2 誤 3 誤

これらはちょっと細かい問題です。

知らなかったとしても正解には関係ないですから、出題者側も苦肉の策としてこのような細かい問題を出題したのでしょう。

この問題より前の過去問である問題2の肢1を復習していれば、日本国憲法が施行される以前には、行政不服審査法に対応する訴願法が存在していたことはおわかりなると思います。

この訴願法が、行政裁判法と同時期に制定され、これと同時に廃止されたかどうかは、細かいのでこの問題で押えておけば十分でしょう。

訴願法も行政裁判法も、制定されたのは明治23年で同時期です。

しかし、訴願法は昭和37年に行政不服審査法の施行に伴い廃止され、行政裁判所法は昭和23年に裁判所法の制定に伴い廃止されたものです。

したがって、訴願法と行政裁判法は同時に廃止されていません。

よって、肢2は誤りです。

肢3も、一応押えておきましょう。上記の通り、行政不服審査法は、日本国憲法プラスアルファの人権保障のための制度です。

そのため、日本国憲法の制定前から存在していたものではないことはおわかりになると思います。

また、裁判を受ける権利(憲法32条)の具体的な法律ともいえる行政事件訴訟法よりも前に制定されていたものではないこともおわかりになるでしょう。

日本国憲法の存在を前提に、行政事件訴訟法および行政不服審査法が制定され、行政事件訴訟法は、裁判を受ける権利の具体的な法律なので、行政不服審査法より後に制定されたということは無いだろうと予測できるでしょう。

日本国憲法(昭和21年)<行政事件訴訟法(昭和37年)=行政不服審査法(昭和37年)となっているのを押えておきましょう。

よって、肢3は誤りです。

4 誤

憲法76条

「行政機関は、終審として裁判を行ふことができない。」

憲法でも勉強しましたが、この条文の意図することは、あくまでも行政機関の判断が最終であってはならないということです。

ですから、前審であるならば、行政機関の判断も許されるということです。そして、三審制というのは、憲法上の要請ではありません。憲法のどこにも三審制でなければならないとは規定されていませんね。

あくまでも三審制は法律上の制度(裁判所法)なのです

ですから、二審制にしても四審制にしても憲法違反にはなりません。経験上三度の審理手続を経ることが望ましいとされているのでしょう。

野球の三振でアウトと同じようなイメージですね。

通常(訴額140万円を超える場合)は、地方裁判所→高等裁判所→最高裁判所という3つの裁判所で判断されます。

もっとも、この三審制について、すべて裁判所による審理でなければならないわけではないのです。

行政機関であっても、裁判所よりも専門性が高く、公正に判断できるような機関であれば、そのような機関を第一審とすることもできるのです。

例えば、特許庁による審判などがその一つです。

特許庁は、産業の発達のための発明かどうかを審理して公開する行政庁です。

ですから、発明が有効か無効かは、裁判所が判断するよりも、その道のプロである特許庁が判断した方が国民にとって簡易迅速な紛争解決になるのです。

そのため、特許無効審判は特許庁が行い、その審判を争う場合は、東京高裁で審決取消訴訟がなされるのです(特許法178条1項)。

地方裁判所の代わりが特許庁の審判だということです。

このように、前審としてなら、行政庁が関与してもかまわないのです。ですから、憲法は、行政機関が裁判を行うことを禁止していないし、裁判手続に類似した行政上の不服申立てを整備することによって地方裁判所における審級を省略することも許されるのです。

5 誤

 これは行政手続法の説明であって、行政不服審査法の説明ではないですね。

以上から問題1は、事実上憲法の問題でしたね。

今後もこのような出題がなされる可能性がありますので、憲法と行政不服審査法など異法域間の関係も考慮にいれて勉強していきましょう。



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