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民法 総則 (H24-28)


代理人と使者の違いに関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。


1 代理人は本人のために法律行為を行う者であるから、代理人としての地位は、法律に基づくもののほかは必ず委任契約によら なければならないが、使者は本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、使者の地位は、雇用契約、請負契約など多様な契約に基づく。

2 代理人は、本人のために法律行為を行う者であるから、代理権の授与のときに意思能力および行為能力を有することが必要であるのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達する者であるから、その選任のときに意思能力および行為能力を有することは必要ではない。

3 代理人は本人のために自ら法律行為を行うのであるから、代理行為の瑕疵は、代理人について決するが、使者は本人の行う法律行為を完成させるために本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、当該意思表示の瑕疵は、本人について決する。

4 代理人は、与えられた権限の範囲で本人のために法律行為を行うのであるから、権限を逸脱して法律行為を行った場合には、それが有効となる余地はないのに対し、使者は、本人の完了した意思決定を相手方に伝達するのであるから、本人の真意と異なる意思を伝達した場合であってもその意思表示が無効となる余地はない。

5 代理人は、法律または本人の意思に基づいて本人のために法律行為を行う者であるから、本人に無断で復代理人を選任することは認められないのに対し、使者は、単に本人の完了した意思決定を相手方に伝達するにすぎないから、本人に無断で別の者を使者に選任することも認められる。



解答 3


本問は、代理人と使者との比較問題です。使者については、あまり過去の出題例がありませんが、テキストおよび問答対話問題で勉強していた人には簡単だったと思います。代理人に似た制度として使者というものがあります。他人を介して本人に法律効果を生じさせる点で代理と共通します。


しかし、代理の場合に意思表示をするのは代理人であり(代理行為)、そのため代理人には代理権の範囲内で意思決定自由があります。


これに対して、使者の場合、意思決定は本人が行い、使者はその完成した意思を伝達する行為をするものです。

使者は意思表示に裁量がないので本人の手足のようなイメージでとらえてください。

そのため、使者の場合、代理人と異なり、意思表示の有効・無効も本人を基準に判断されるのです。


以上の理解をしていれば容易に正解できるでしょう。


肢1 誤

 本問のポイントは、「代理人としての地位は、法律に基づくもののほかは必ず委任契約によらなければならない・・・」の部分です。

 そもそも代理人としての地位は、代理権授与契約によりますので、委任契約とは別個独立のものです。ですから、委任契約を結んだからといって代理権授与契約がなければ、代理人とはなりません。

また、委任契約以外の請負契約や雇用契約などと一緒に代理権授与契約を締結することもあります。したがって、誤りです。


肢2 誤

本問のポイントは、「代理権の授与のときに意思能力および行為能力を有することが必要である・・・」の部分です。

代理制度は、本人の能力を拡充する、本人のための制度です。つまり、代理人の法律行為は全て本人に帰属するのが原則です。

そのため、どのような代理人を選ぶのかは本人の自由ですし、代理人がどのような法律行為をしても本人に効果が帰属し、代理人には効果が帰属しないのが原則ですので、代理人にとっても不都合はないのです。ですから、代理人は、行為能力者であることを要しないのです(102条)。

ただし、意思表示をする以上、意思能力(10歳以上程度の能力)は必要であると解されています。

これに対して、代理人にも行為能力が不要なので、使者も同じように不要です。また、使者は意思表示に裁量がないので意思能力も不要です。よって、誤りです。


肢3 正

上記の通り、代理の場合に意思表示をするのは代理人であり(代理行為)、そのため代理人には代理権の範囲内で意思決定自由があります。

そのため、意思表示の有効・無効は代理人を基準に判断されます(101条1項)。

これに対して、使者の場合、意思決定は本人が行い、使者はその完成した意思を伝達する行為をするものです。

使者は意思表示に裁量がないので本人の手足のようなイメージでとらえてください。そのため、使者の場合、代理人と異なり、意思表示の有効・無効も本人を基準に判断されるのです。


肢4 誤

本問のポイントは、「権限を逸脱して法律行為を行った場合には、それが有効となる余地はない・・・」の部分です。

代理人が権限を逸脱して法律行為を行った場合、無権代理行為となります。しかし、本人が追認するか、または表見代理(110条)が成立すれば、本人に効果が帰属し、有効となります。また、使者が、権限を逸脱して法律行為を行った場合、本人を基準として錯誤無効になるか、あるいは110条の表見代理の類推適用ということになります。


肢5 誤

本問のポイントは、「本人に無断で復代理人を選任することは認められない・・・」の部分です。

まず、任意代理人の場合、本人との信頼関係に基づいて代理権授与契約を締結しています。本人は、任意代理人が選任した復代理人との信頼関係はありません。そのため、任意代理人は、原則として、復代理人を選任することはできません。

ただし、①本人の許諾を得たとき、又は②やむを得ない事由があるときは、例外的に復代理人を選任することができます。

これに対して、法定代理人の場合、法律上当然に代理人の地位を有する者であって、親権者や後見人などのことをいいます。法律上当然に代理人になって、権限も広く辞任も基本的にはできません。

そのため、法定代理人は、自己の責任において、いつでも常に復代理人を選任することができるのです。

したがって、法定代理の場合は、本人に無断で復代理人を選任することができます。



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