WEB練習問題(リニューアル中) > 行政法過去問 > 行政手続法 > 行政法 行政手続法 (H22-12)

行政法 行政手続法 (H22-12)


行政手続法による標準処理期間についての次の記述のうち、妥当なものはどれか。


1 地方公共団体がなす許認可等についても、法律に根拠を有するものの標準処理期間は、主務大臣が定めることとされている。

2 申請に対する処分と異なり、届出の処理については、標準処理期間が定められることはない。

3 申請の処理が標準処理期間を超える場合には、行政庁は、申請者に対して、その理由と処分の時期を通知しなければならないとされている。

4 標準処理期間とは、申請が行政庁によって受理されてから当該申請に対する処分がなされるまでに通常要すべき期間をいう。

5 標準処理期間を定めることは、法的な義務であるから、これを定めることなく申請を拒否する処分をすると、重大な手続上の違法として、それを理由に処分が取り消されることがある。


解答 2 


肢3、4、5は即座に正誤の判断が出来て欲しかった問題です。

後は肢1の引っ掛けに迷わずに、届出の意味から正解を導くことができていればそれで十分です。


1 誤

 本問のポイントは、法律に根拠のある地方公共団体の機関がする処分に行政手続法の適用があるかどうかです。3条3項の適用除外の規定に引っかからないように注意しなければなりません。


3条3項

 第一項各号及び前項各号に掲げるもののほか、地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、次章から第六章までの規定は、適用しない。


行政手続法は、法律ですから全国一律に適用されるものですが、地方行政にもそのままあてはまるものではありません。

なぜなら、地方自治は、そこで生活をしている住民の意思に基づいてなされるのが適切だからです。

多種多様な地方の独自性に委ねるために、行政手続法の適用が除外されているのです。

ただし、処分と届出に関しては、その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限られることに注意しましょう。

条例や規則は、まさに地方の住民の意思の表れとして制定されるものなので、これらがある場合は優先されるわけです。

ただ、これらがない場合は、行政手続きの一般法である行政手続法の適用を受けるということです。

 そのため、地方公共団体がなす許認可等について、条例又は規則ではなく、法律に根拠を有するものについては、行政手続法が適用されることになります。

 ですから、標準処理期間は、行政庁が定めることになります(行手法6条)。

したがって、「主務大臣が定める」という部分は誤りとなります。


2 正

届出とは、申請以外の行政庁に対し一定の事項の通知をする行為です(行手法第2条7号)。

そして、届出は、形式上の要件に適合したものが、提出先の機関の事務所に到達したときに、義務が履行されたことになります(行手法37条)。

したがって、届出の形式上の要件に適合している場合は、届出の提出機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとしています。

形式的要件が満たされた届出が到達すれば、届出の効果が生じるということです。

そのため、届出は、到達によって手続きが完了し、申請のように、届出に対する処理手続き自体が存在しません。

よって、申請に対する処分と異なり、標準処理期間が定められることはないのです。


3 誤

標準処理期間の設定は、申請についての諾否という結論を問わず、処分がでるまでの期間を努力義務として定めるものです。

このように標準処理期間は、あくまで努力目標にしか過ぎないため、申請の処理が標準処理期間を超える場合でも違法ではなく、その理由や処分の時期等の標準処理期間を超えたことに関する通知をする義務もないですし、そのような規定もありません。

なお、申請に対する拒否処分がなされる場合、申請者に対して、原則として同時に当該処分の理由を示さなければなりませんが(行手法8条)、これと混同しないようにしましょう。


4 誤

問題6肢1にもあるとおり、申請は到達しなければ、その内容がわからないので、その申請を処理する期間もどれくらいとなるかはわかりません。

ですから、標準処理期間を定める場合は、申請が到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めて公表すればよいのです。

したがって、「行政庁によって受理されてから」という部分が誤りとなります。

なお、行政手続法の成立前は、行政裁量により独断で申請を受理するか否かを判断することができ、不受理の場合、申請書類の返戻は許されていました。

これでは、申請者の自由と財産を不当に圧迫することから、行政手続法の成立によって、国民の自由・権利を守るために手続の公正・透明化が図られたのです。そのため、行政手続法においては、「受理」という概念はありません。


5 誤

標準処理期間の設定は、申請についての諾否という結論を問わず、処分がでるまでの期間を努力義務として定めるものです。したがって、「法的な義務である」という部分が誤りとなります。



前の問題 : 行政法 行政手続法 (H12-13)
次の問題 : 行政法 行政手続法 (H20-12)

問題一覧 : 行政手続法

WEB練習問題(リニューアル中) > 行政法過去問 > 行政手続法 > 行政法 行政手続法 (H22-12)